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尿素

尿素は代表的な窒素系化学肥料で、約46%の窒素を含有し、窒素系肥料の中で窒素含有量が一番高い。また、工業上にも重要な化学原料であり、他の化学肥料には見られないほど広く使われている。すべての化学肥料の中に生産量が一番多い品目である。

1. 成分と性質

尿素の化学構造はNH2CONH2である。純粋の尿素は尿素態窒素46.4%を含有する。無味無臭の結晶で、水に容易に溶け、その溶解度は 108 g/100 ml (20 ℃)、弱アルカリ性を呈する。空気中の水分を吸収して潮解する性質がある。従って、固結防止対策として、市販品はすべて造粒して白い球状粒子となって、粉品がない。なお、本邦の肥料登録基準は窒素含有量43%以上で、有害成分のビウレット含有率をクリアすれば、尿素肥料として登録できる。

尿素はその化学性質が安定して、常温下、強酸や強アルカリ以外の物質と混合しても化学反応がほとんど起きない。

尿素は乾燥・造粒際の高温により一部が縮合して有害のビウレットを生成することがある。ビウレットは植物体内のタンパク質合成を阻害して、特に葉のクロロフィル合成に強く阻害し、若葉にクロロシスが現れる。また、種子の発芽にも悪影響を与え、発芽率を低下させる要因の一つである。本邦の「肥料の品質の確保等に関する法律に基づき普通肥料の公定規格を定める等の件」に定めた規制値は窒素成分1%につきビウレット性窒素0.02%以下とされている。

2. 用途

尿素はその化学的性質が中性であるため、ほとんどの肥料と混合しても化学反応を起こすことがない。また、いろんな粒径のものもあり、単独散布のほか、化成肥料の原料とBB配合肥料の原料にも多用される。大体、粒径によりその用途が決められる。例えば、小粒尿素(粒径0.8~2.5mm)は単肥と化成肥料の原料、大粒尿素(粒径2~4mm)は単肥とBB配合肥料の原料、超大粒尿素(粒径>4mm)は園芸用か林業用の単肥として使われる。施用後、窒素養分が作物に吸収された後の残留成分がないので、長期使用しても土壌pHなどに及ぼす影響が少ない。

尿素自体は植物の根に吸収されないが、土壌微生物の作用で加水分解してアンモニア態窒素と硝酸態窒素に変化してから植物根に吸収利用される。但し、尿素が葉の細胞に直接に吸収・利用されることができる。従って、尿素は基肥、追肥、葉面散布などすべての施肥方式にも対応できるいわゆる万能の窒素肥料である。

3. 施用後土壌中の挙動

尿素は土壌中の粘土鉱物と腐植から構成される土壌コロイドに吸着されることがあるものの、その吸着力が弱く、特に砂質土壌と水田では流失しやすい。

尿素は土壌中ではウレアーゼを有する微生物により加水分解され、アンモニア態窒素の炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウムを生成する。この過程はアンモニア化成と呼ばれる。尿素のアンモニア化成速度は土壌種類と土壌温度により大分異なる。概して微生物が多い粘土質土壌、有機物が多い土壌ほど速く、土壌温度が高いほども速くなる。施用後、土壌水分に溶解して、アンモニア化成にかかり、アンモニア態窒素になる日数は、春秋季では3~7日、高温の夏季では2~3日、気温の低い冬季では7~10日又はそれ以上かかることもある。従って、尿素は一応肥効の速い速効性肥料に属する。尿素のアンモニア化成で生成したアンモニア態窒素は容易に土壌コロイドに吸着・保持され、長く土壌に滞留できる。通常の耕作環境に於いて、尿素の肥効持続期間は30~50日である。

尿素のアンモニア化成で生成した炭酸水素アンモニウム又は炭酸アンモニウムはアルカリ性で、土壌pHを一時的に高める作用があり、そこで亜硝酸が集積し、障害を発生する場合がある。また、乾燥土壌や高pH土壌では、表面施用や局部の大量施用は生成したアンモニアが土壌コロイドに吸着されず、ガス化しやすく、作物の発芽や初期生長に悪影響を及ぼす可能性がある。

アンモニア態窒素は土壌微生物の硝化作用によりさらに硝酸態窒素に変化する。最後に吸収されない硝酸態窒素は土壌微生物の脱窒作用により窒素ガスとなり大気中に散逸してしまうか雨水や灌漑水により流失されてしまう。

4. 施用上の注意事項

尿素は施用上に注意して、含まれているビウレットの有害作用とアンモニア化成で生成したアンモニアガスの発生を抑えられれば、非常に良い窒素肥料である。尿素の施用には下記の注意事項がある。

  1. アルカリ性肥料と一緒に施用しない
    尿素は施用後加水分解され、アンモニア態窒素になってから初めて植物に吸収される。熔りん、石灰、草木灰などアルカリ性肥料と一緒に施用する場合は、アルカリ性の環境では尿素のアンモニア化成が遅く、流失されやすい。また、生成したアンモニア態窒素がアルカリ物質の存在により容易にガス化して揮散される。通常、春から秋まで、尿素とアルカリ性肥料の施肥間隔が4~7日、冬季ではその間隔が10日に空ける必要がある。

  2. 水分の多い植物油粕、その他の有機肥料との混合に注意する
    水分の多い植物油粕、有機肥料はその中に生息しているウレアーゼを有する微生物が尿素を加水分解して、アンモニアを放出させ、揮散する恐れがある。但し、有機物質を混合しても、造粒、乾燥工程を経由すれば、微生物が死滅してしまうので、問題が起きない。また、水分が多くても混合後すぐ施用する場合は問題が起きない。

  3. 表層施用を避け、深層施肥にする
    尿素は施用後土壌微生物によるアンモニア化成を経てアンモニア態窒素になってから植物に吸収される。このアンモニア化成の段階では、生成したアンモニア態窒素が揮発しやすい。特にアルカリ性土壌や有機物の多い土壌では、表面施用ではアンモニアの揮発損失がさらに高くなる。通常、尿素は深さ10~15cmの耕作層に施用することが薦められる。その理由は施用後、尿素が湿潤の土層にあり、溶解しやすく、生成したアンモニア態窒素がすぐ土壌コロイドに吸着される。また、その層に作物の根系が密集して、吸収しやすい。試験結果によれば、尿素の深層施肥は表層施肥よりその肥料利用率が10~30%高くなるデータがある。

  4. 種肥にしない
    尿素は生産工程にビウレットの生成が避けられない。尿素中のビウレット含有量が1.5%を超えると種子の発芽と苗の生長に害を与える。また、高濃度の尿素は種子の水分を奪い、発芽を妨害する。従って、尿素を種肥にしないことが重要である。基肥として使用する際にも種子に少なくとも2~3cm以上離れ、直接に接触させない。

  5. 施用後すぐ灌漑をしない
    尿素は水に良く溶けるが、土壌コロイドに吸着・保持される能力が弱い。施用後すぐ灌漑と降雨では、尿素が水に溶解され、そのまま流失される可能性が高い。尿素のアンモニア化成にかかる期間は土壌種類、土壌水分、土壌温度により2~10日かかる。従って、降雨前の施用を避けるべき、施用後の灌漑は春秋季では3~5日、夏季では3日、冬季では7日以降にする。

  6. 水田で施用後の数日内に排水しない
    尿素が水に良く溶け、土壌への吸着力が弱いため、水に流されやすい。基肥として施用する場合は、施用5~7日経過後、アンモニア化成でアンモニア態窒素に変化してから水を入れる。追肥として施用する場合は、施用後3~5日換水しない。

  7. 過剰施用しない
    尿素の窒素含有量が高く、多く施用すると、作物の需要を超えた量の存在は、無駄になるばかりではなく、肥料焼けを引き起す可能性もある。また、作物に吸収しきれない余剰の窒素が流失して、地表水と地下水の汚染源となる。通常、10アールの耕地では基肥としての施用量が畑では7~20kg、水田では15~25kg、追肥としての1回の施用量が10~15kg以内に抑えることが適切といわれる。

  8. 追肥の遅い施用は避ける
    尿素の肥効発現に時間がかかり、持続期間も長いため、施用時期が遅くなると、作物の需要に間に合わない可能性がある。また、肥効期間が長く、余分の窒素が作物の成熟を妨げ、収穫物の品質を下げる可能性がある。追肥に使う場合は、硝安や硫安など速効性窒素肥料より4~7日早めに施用する。

  9. 高濃度の葉面散布を避ける
    尿素は葉の細胞に吸収されるので、葉面散布肥料としてよく使われる。但し、高濃度の尿素液は肥料焼けを引き起す可能性がある。通常、尿素を単独で葉面散布に使う場合は、適切な濃度範囲はコメ、小麦、トウモロコシ、綿などでは1~2%、野菜などでは0.5~1.0%、果樹などでは0.5~1.5%である。ほかの肥料と配合して葉面散布に使う場合は、その濃度をさらに下げるべきである。

  10. りん酸、加里などと併用する
    尿素は単一の窒素肥料であるため、りん酸肥料や加里肥料などと配合して施用することは養分の相乗効果があり、肥効が高くなる。また、有機肥料と一緒に施用すると、尿素の速効性と有機肥料の緩効性がうまく調和して肥効が高くなるだけでなく、有機肥料の分解に伴う窒素飢餓現象の発生を防ぐこともできる。但し、この場合は混合後すぐ施用することに限る。