養液栽培肥料
養液栽培とは、肥料を水に溶かした液(養液)を使って作物を栽培する方法である。養液栽培の長所として、灌漑と施肥が一体化され、肥料と水の利用効率がよく、大規模化が容易になること、土壌病害や連作障害をある程度回避できることなどが挙げられる。特に作物の生育に合わせて養分と水が最適に投与され、作物の生育が速く、肥料や水の利用効率が高いことが最大の特徴である。
養液栽培は作物の根を支える培地の有無により、水耕栽培と固形培地耕に分けられる。また、固形培地耕はさらに土を使う養液土耕と土以外の固形培地を使う固形培地耕に分けられる。なお、養液土耕以外の固形培地耕は一応水耕栽培の範囲に入る。他に作物の根への投与ではなく、培養液を地上部の茎葉に散布し、葉細胞に吸収させる「葉面散布」という施肥方式も広く言えば、養液栽培の範疇に入る。
この3つの施肥方式はそれぞれ特徴がある。水耕栽培は作物生育に必要な養分はすべて培養液から供給されるものである。また、培養液に溶かした養分は化学成分が変化せず、そのまま作物の根に吸収される。水耕栽培の最大な特徴は養水分の吸収効率が高く、作物の生育は養液土耕栽培より速い。欠点としては培養液に使用できる肥料種類が限られ、生産コストが高い。今流行っている植物工場がすべて水耕栽培を採用する。主に生育期の短いミツバ、リーフレタス、チンゲンサイ、コマツナ、ホウレンソウなどの葉菜類の栽培に使用する。
養液土耕栽培は、水耕栽培と同じ作物生育に必要な養分はすべて培養液から供給されるものであるが、土を培地にして使い、土耕感覚で栽培するものである。その特徴は土の緩衝機能と土壌微生物の働きが活かされ、培養液に溶かした養分は土に入ってから化学的変化を起こすことがあり、尿素や硫安、硫酸加里などの汎用肥料を使えるので、肥料を含む農業資材のコストが断然安い。また、作後の培地廃棄もない。欠点としては養分の吸収効率が劣り、作物の生育も水耕栽培より遅い。主に生育期間の長いトマト、イチゴ、キュウリなどの果菜類やバラなどの花き類に使用することが多い。
葉面散布は、化学肥料の溶液(養液)を葉の表面に散布する施肥方式である。培養液に含まれる養分が表皮細胞または気孔を経由して葉に進入し、葉肉細胞に取り込まれる。その特徴は吸収速度が非常に速く、数時間~1日で施肥効果がみられる。特に根の吸収機能が阻害されている場合は、葉面散布は養分補給の応急手段として有効である。欠点としては葉細胞の吸収機能に限界があり、生育に必要の養分を葉面吸収だけでは賄うことができず、補助的手段に過ぎないことである。
養液栽培は化学肥料が普及されてから開拓した新しい耕作方法で、使用される肥料には一定の制限がある。ここではでは養液栽培(葉面散布を含む)に適用する肥料を絞って説明する。