石灰質肥料
石灰質肥料とは主成分としてカルシウムを含有する肥料を指す。土壌にカルシウムを補給するほか、土壌pHを矯正する作用もあり、さらに土壌消毒にも使われ、農業生産に欠かせないものである。
本邦の肥料公定規格には石灰質肥料はその成分と原料により生石灰、消石灰、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、副産石灰肥料、混合石灰肥料に分けられている。このほか、カルシウムを含む肥料としては、石灰窒素、硝酸石灰、被覆硝酸石灰、過燐酸石灰、重過石、熔りん、苦土重焼燐、混合りん酸肥料、鉱さいけい酸質肥料、軽量気泡コンクリート粉末肥料があるが、主成分はカルシウムではないため、石灰質肥料には属さない。また、貝化石粉末、貝殻粉末、鉱さい、石膏などもカルシウムが含まれるが、土壌改良材に分類されている。
石灰質肥料の原料は石灰石である。ほかにかき殻からも石灰質肥料(かき殻石灰)が作られる。本邦は良質の石灰石に恵まれており、 国内で自給できる数少ない資源の一つである。ただし、国内に採掘された石灰石は主にセメント原料、建設業の骨材や製鉄助剤として消費され、肥料に使われているのはその一部しかない。
カルシウムは植物生育の必須元素として、下記の役割を有する。
イ、植物の細胞壁を作り、また、これを強化する。
ロ、有機酸などの有害物質と結合して、これを無害化する。
ハ、葉緑素の生成、光合成で生成された糖類の移動に必要である。
ニ、根の発育を促進するなどにより病害に対する抵抗力を強くする。
ホ、植物に硝酸態の窒素を良く吸収させ、加里、苦土の吸収量を調整する。
植物にとって、カルシウム需要量は窒素、りん酸、加里の三大養分より少ないが、それでも中量元素と呼ばれるほどほかの必須元素より多い。石灰質肥料は土壌に不足がちのカルシウム養分を補給する役割をする。
石灰質肥料の最大の用途は酸性土壌の矯正資材として使われる。農業生産に於いて土壌酸性化が主に次の4つの問題を引き起こす。
- 作物の生育阻害
作物は一般的に土壌pHが弱酸性から中性付近(pH5.5~7.0)で最も生育が良い。pH4.9以下の強酸性土壌では生育不良となり、生育不能の場合もある。主な理由は土壌酸性化によりアルミニウムが活性化され、根に害を与え、養水分の吸収能力が落ちるなど生育障害が顕著に現れる。 - 土壌の養分供給能力の衰退
強酸性の土壌では、活性化したアルミニウムがりん酸と結合して植物に吸収できない形態で固定するほか、カルシウムイオンやマグネシウムイオンが溶脱して、不足となる。また、ホウ素やモリブデンのような微量元素の溶解度も落ちて、吸収利用されにくくなり、欠乏症が生じやすい。 - 作物病害の多発
土壌が酸性に傾くと、土壌微生物群のうち、糸状菌の活動が活発となり、植物病害を引き起こす。特に青かび病、赤枯病、いもち病、灰色かび病、萎黄病、萎凋病、うどんこ病、紫かび病、輪紋病などが発生しやすくなる。 - 土壌保肥保水性の喪失
土壌が酸性に傾けると、土壌粒子表面の塩基の溶脱により土壌団粒が崩され、保肥保水能力が落ちる。
土壌酸性化による植物の生育障害等を回避するため、土壌酸性改良資材の施用が非常に重要である。石灰質肥料は強いアルカリ性を示すため、適切な種類と量の石灰質肥料を施用すれば、土壌pH値を任意の値に調整することができる。作物にとって最適なpH値の土壌で栽培することで、生育が良くなり収穫量の上昇にも繋がる。
石灰質肥料は強アルカリ性であるため、その散布によって、病原菌を死滅させるpH環境や、害虫が好まないpH環境を作り出して病害虫の防除として役立てることもできる。例えばトマトの青枯病、斑点病、灰色かび病、白菜の根こぶ病、稲のいもち病などは石灰質肥料によって対策が可能である。
弊社がご提供する石灰質肥料は、生石灰、消石灰、苦土石灰、炭酸カルシウム、かき殻石灰の5種類である。