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当社は、これまでの豊富な取り扱い経験を基に、さまざまな肥料に関する専門的な情報を集約いたしました。
長年にわたり培った知見をもとに、皆様にお役立ていただける内容を提供しております。ご一読いただければ、新たな視点や発見が得られることと存じます。

日食ドライ灰

 弊社が取り扱っている日食ドライ灰は、日本食品化工(株)水島工場がトウモロコシを原料にコーンスターチや異性化糖を製造する際に排出したトウモロコシ残渣を燃やした後の灰である。通常、デンプンなどの製造工程に発生したトウモロコシ種皮などの残渣は飼料として利用されることが多いが、乾燥などの処理コストを省くために、直接に燃やして、無機化させ、減量減容したうえ、その灰を肥料として販売することになる。

日食ドライ灰は次の特徴がある。

① 完全に無機化されているので、腐敗することがない。

② 高濃度のりん酸と加里、苦土を含有し、成分量が安定しているので、国産の肥料資源として魅力的である。

③ 強アルカリ性物質で、土壌pH調整の効果がある。ただし、種子の発芽や初期生長が阻害される恐れがある。

 

1.成分と性質

工場から排出されたトウモロコシ残渣は水分が少なく、簡単に燃やすことができる。800℃で燃やした後、残渣重量の610%相当する灰が残った。

日食ドライ灰は無臭灰白色の粉末であるが、未完全燃焼の炭素が残っているため、黒い粒状のものが一部混ざっている。燃やす際に排ガスの浄化措置として水酸化マグネシウムを添加した結果、灰の養分含有量はく溶性りん酸19%、く溶性加里14%、く溶性苦土8%を保証している。なお、トウモロコシ残渣中の窒素は燃焼時の高温により窒素ガスとなってしまうので、灰にはほとんど残されていない。水に不溶だが、水溶液のpH1113の強アルカリ性を呈する。

肥料登録上、日食ドライ灰は副産肥料の分野に属する。

 

2.用途

日食ドライ灰はりん酸と加里、苦土の含有量が高く、ほかに少量の石灰と微量元素が含まれている。アルカリ性が強いので、アルカリ性肥料に属する。土壌にりん酸、加里、苦土と微量元素を補給するほか、土壌pH調整と改良材としても役立つ。

日食ドライ灰は単独施用の場合はPK化成肥料という形で基肥と追肥の両方とも使える。ただし、強アルカリ性で、直接施用の場合は種子の発芽や初期生長が阻害される恐れがある。通常、硫酸などの無機酸を使って、そのアルカリ性を中和してからりん酸と加里、苦土を有する原料として化成肥料の製造に使う場合が多い。

日食ドライ灰に含まれている養分がすべて無機態のもので、ほかの有機肥料のように土壌物理性(通気性や保水性)と土壌生物性(微生物増殖など)の改善効果が全く期待できない。

3.施用後土壌中の挙動

日食ドライ灰に含まれている養分はすべて無機態のものである。その分解と放出が土壌微生物の働きに全く依存せず、その性質と肥効が化学肥料に近い。

日食ドライ灰に含まれるりん酸、加里と苦土がほとんどく溶性のものである。直接施用の場合は、施用後水に溶けず、作物根から放出された根酸により分解され、養分が遊離して根に吸収される。従って、速効性がないが、土壌のりん酸固定の影響を受けず、土壌中の移動もほとんどない。ただし、事前に硫酸などの無機酸で中和処理される場合は、特に化成肥料の原料として中和処理を受け場合は養分の大半が水溶性に変化する。水溶性養分は施用後に普通の化成肥料の養分と同じ水に溶けて養分を溶出して、土壌に拡散され、作物に吸収利用される。く溶性養分は水に溶けず、緩効性養分としてゆっくり肥料効果を発揮する。

また、日食ドライ灰に含まれている高濃度の苦土成分は施用後、ほかのマイナスイオンと結合して難溶性化合物を生成することが少なく、ゆっくり土壌pHをアルカリ性にする能力があり、土壌pH調整と苦土養分の補給に役立つ。

日食ドライ灰は単独で畑に多量施用する場合は、その強アルカリ性により種子の発芽や苗の初期生長が阻害される恐れがある。また、生長中の植株に接触すると肥料焼けが発生する可能性がある。単独施用の場合でも事前に硫酸などの無機酸でpH67まで中和してから施用することを勧める。

通常の有機肥料では粗大有機物が土壌通気性と保水性の向上に寄与して、土壌微生物に分解されなかった有機質が腐植となり、土壌団粒形成の促進に寄与するが、日食ドライ灰は有機物を含んでおらず、土壌物理性(通気性や保水性、団粒構造の形成)と生物性の改善効果が期待できない。

 

4.施用上の注意事項

日食ドライ灰は有害物質が少なく、養分含有量が比較的に高く、速効性と緩効性もあり、上手に使いこなせば良い肥料である。その使用には下記の注意事項がある。

  1. 中和してから使う
    日食ドライ灰は強アルカリ性で、そのまま施用しては種子の発芽や苗の初期生長を阻害する恐れがある。硫酸などで中和してから施用することを勧める。但し、それを原料にして生産された化成肥料は、生産工程ですでに中和されたので、問題が起きない。
  2. 過剰施用をしない
    日食ドライ灰は養分含有量が比較的高く、過剰施用の場合は濃度障害が発生する恐れがある。
  3. 窒素肥料との併用
    日食ドライ灰は窒素成分がないので、肥効を高めるために窒素肥料と併用することを勧める。一番良いのは化成肥料の原料として窒素成分を追加し、粒状化してから施用する。