肥料データベース
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硝酸マグネシウム
肥料用硝酸マグネシウムは6個の結晶水を有する硝酸のマグネシウム塩で、完全水溶性であるため、作物が吸収しやすく、肥効が素早く発揮できる速効性窒素肥料と苦土肥料として施設栽培用の養液栽培肥料に使われている。また、硝酸マグネシウムの無水塩は工業分野では濃硝酸の脱水剤、火薬原料、触媒その他マグネシウム化学品の原料としても広く使用される。
硝酸マグネシウムに含まれる窒素は硝酸態窒素であり、作物が直接に吸収することができる。作物は吸収した硝酸態窒素を自らの体内で亜硝酸 → アミノ酸 → 蛋白質と順次還元していき、アンモニア態窒素や尿素態窒素を主体とする化成肥料と比べてその効果は著しく早く出現する。一方、マグネシウムは葉緑素を構成する元素であり、葉緑素形成や新陳代謝に不可欠な物質である。欠乏の場合は、葉が緑色から黄色くなり、光合成能力が低下する。また、細胞分裂の盛んな生長点等にりん酸の移動が阻害され、生育が悪くなる。硝酸マグネシウムに含まれているマグネシウムは通常の苦土肥料と異なり、完全水溶性であるため、施用後速効的に作物に吸収され、肥効が発揮される。
1.成分と性質
肥料用の硝酸マグネシウムは6水塩(Mg(NO3)2・6H2O)で、無色無味の結晶、吸湿性が高く、水に良く溶け、溶解度は125g/100ml(20℃)、水溶液のpHは5.0~5.5である。融点が89℃しかなく、それ以上の高温に遭うと融けてドロドロの液状になる。硝酸マグネシウム6水塩は硝酸態窒素10.9%、水溶性マグネシウム(MgO換算)15.7%を含む。水に溶けると、硝酸イオンとマグネシウムイオンに離解される。結晶水があるため、硝安や硝酸加里のような硝酸塩化合物と異なり、爆発などの危険性が全くない。
2.用途
硝酸マグネシウムに含まれる窒素は硝酸態窒素で、マグネシウムも完全水溶性なので、作物に直接に吸収でき、速効性肥料に属する。但し、硝酸態窒素は土壌に吸着せず、容易に流失するため、基肥に適せず、追肥として果菜類や葉菜類、園芸作物に使われる。また、水溶性マグネシウムはマグネシウム欠乏症が発生した際に速効性のあるマグネシウム供給源として使われる。特に硝酸マグネシウムが溶けて離解したマグネシウムイオンがりん酸イオンと反応して生成したりん酸マグネシウムも水溶性で、りん酸系肥料と配合しても沈殿が発生しにくいため、養液栽培肥料のマグネシウム供給源として適している。また、マグネシウムイオンが交換性塩基として水素イオンやナトリウムイオンと置き換え、土壌コロイドによく吸着され、土壌の塩基種類と塩基飽和度の改善に役立つ。
通常、硝酸マグネシウムは主に養液栽培に使用するほか、硝酸態窒素とマグネシウムイオンが葉の細胞に直接吸収できるので、苦土欠乏症が発生した際に葉面散布用に使用される。
3.施用後土壌中の挙動
硝酸マグネシウムは主に養液栽培と葉面散布に使うが、一部の農家は速効性の苦土を有する硝酸態窒素肥料として、直接畑や水田に施用することがある。
土壌に施用した後、すぐ土壌溶液に溶けて、硝酸イオンとマグネシウムイオンに離解される。硝酸イオンが陰イオンで、土壌に吸着されず、水分と一緒に移動し、流失しやすい。マグネシウムイオンが陽イオンで、土壌コロイドに吸着され、土壌塩基となり、流失がほとんどない。
硝酸マグネシウムは水によく溶けるため、施用後ほかの窒素肥料より土壌ECと浸透圧を速く上昇させる。但し、硝酸態窒素の含有量が低く、通常の施肥量としては濃度障害を起こす可能性が低い。
施用後、硝酸態窒素とマグネシウムイオンは共に作物に吸収され、残留する成分がないため、長期施用しても土壌を酸性化させる恐れがない。逆に、吸収しきれないマグネシウムイオンは土壌塩基として残され、土壌pHをアルカリ性に傾ける作用がある。
硝酸マグネシウムの肥効発現は天候や土壌種類にほとんど影響されず、非常に早く、大体施用2日後に見られる。但し、窒素肥料としての肥効持続期間は短く、15~25日しかない。苦土肥料としての肥効持続期間は相当長い。
4.施用上の注意事項
硝酸マグネシウムは施用に当って、下記の注意事項を守る。
- 基肥にせず、追肥として使う
硝酸マグネシウムは硝酸態窒素が土壌に吸着されず、肥効持続期間も短く、基肥としての肥効が低い。一番良い施用法は水に溶けてから葉面散布を兼ねる追肥の形で施用する。又は硫酸マグネシウム7水塩に代わって、養液栽培肥料のマグネシウム養分源として使う。 - 水田での施用を避ける
硝酸マグネシウムは水に溶けて離解した硝酸イオンとマグネシウムイオンが容易に水と一緒に流失するので、水田での施用は肥効が低いうえ、地面水と地下水の水質汚染の原因にもなる。但し、速効性の穂肥として、葉面散布で一定の効果がある。 - 開封後の吸湿を防ぐ
硝酸マグネシウムは吸湿性が高く、潮解性もあり、使用後、残ったものを袋に密閉して、早めに使い切る。