加里系肥料
加里(K、カリウム)は植物の生育に必要な三大養分の一つで、植物の体組織を構成する成分ではないが、イオンの形態にして植物体内の浸透圧調整等を通じ、デンプン、タンパク質の生成、移動、蓄積に役立つ。また、光合成に於ける光りん酸化反応においてATPの合成・転流にも欠かせない。
植物体内に於ける加里の主な働きは、
イ、水分の蒸散作用を調節する。
ロ、根の発育を早める。
ハ、植物組織を強固にして、倒伏や寒さ・暑さに対する耐性、病虫害に対する抵抗性を高める。
二、開花、結実を促進する。
ホ、日照の不足による成長速度の低下を抑える。
加里は主に根の発育と細胞内の浸透圧調整に関係するため、根肥(ねごえ)ともいわれる。
加里は地殻に於ける存在量が非常に多く、その重量比が酸素(O)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)に次ぐ7番目で、地殻の約2.6%を占める。砂壌土と熱帯赤色土壌を除き、通常の土壌中に加里(K2O換算)は1~2.5%を有するが、ほとんどが長石、雲母、粘土鉱物を構成する不溶性のアルミノケイ酸塩鉱物である。植物が吸収利用できる水溶性加里とイオン交換態加里は少ないため、外部から加里を有する肥料を施用する必要な訳である。
加里肥料は単肥と加里を含む化成肥料に大別されるが、単肥は化学的に単独の一成分しかない肥料種類で、その化学成分により塩化加里、硫酸加里、硝酸加里、りん酸一加里、けい酸加里などに分けられている。一方、化成肥料は窒素やりん酸などの原料に単肥の加里肥料を加え、混合反応して、造粒したものである。その中に含まれている加里成分は原料に使われている加里単肥と同じような性質がある。
常用の加里系肥料はく溶性のけい酸加里を除き、すべて水溶性である。施用後、土壌溶液に溶けてカリウムイオンに離解される。カリウムイオンは陽イオンなので、土壌コロイドに吸着されやすく、水による流失が少なく、土壌中でほかの物質と反応して難溶性化合物を形成することがなく、三大養分の中に利用率が一番高い。植物に吸収されてから組織細胞内ではほとんどイオンの形で存在して、細胞が死ぬと細胞外へ流出しやすい。また、植物体内での転流も容易である。
加里が流失しにくく、難溶化もしないため、施用後土壌中に長期間存在することができる。現在、本邦では加里欠乏症状がほとんど見られず、逆に土壌に過剰蓄積の傾向がある。土壌中の加里濃度が高すぎると、土壌の塩基バランスが崩れ、作物が加里を優先的に吸収して、必要以上に吸収することになる。これは過剰吸収(ぜいたく吸収)と呼ばれている。加里の過剰吸収により、拮抗的にアンモニア態窒素、石灰や苦土の吸収が阻害され、生理的障害の発生を促している。通常、作物の加里要求量は、一般に窒素ほどは多くないが、必要以上に施用する傾向があり、過剰吸収を起こしやすい。
加里肥料の肥料効果は土壌種類、作物種、栽培技術や気候条件に関係しているが、一番重要なのは加里肥料の種類である。ここでは単肥としてよく使われている加里肥料の種類とその用途、施用方法について簡単に紹介する。なお、化成肥料に入っている加里養分については化成肥料の編に紹介する。
弊社は汎用の加里肥料として、塩化加里と硫酸加里、特殊な加里肥料としてケイ酸加里を取り扱っている。